「中国のシリコンバレー」と呼ばれる最先端の都市「深セン(深圳)」へ行きました。
深センは中国でも最も進んでいる都市と聞いてはいましたが、その発展具合は想像以上で、大きな衝撃を受けました。
今回はそんな深センで受けた衝撃や、深センがどのような都市であるのかについてまとめていきます。
深センとは
深センは中国本土の4大都市の一つで、経済特区に指定されています。近郊を含む都市的地域の人口は約1,500万人です。
1980年に改革開放路線を採用した鄧小平の支持によって深セン経済特区が指定されたことで、それまでただの小さな村だった深センは急成長を遂げました。
深センは外部から労働者が流入して都市が形成されたため、様々な地域出身の人がいます。そのため、広東語ではなく普通話が使われることがほとんどのようです。
深センは現在世界中のハイテク製品を生産する工場が多数存在するので、「ハードウェアのシリコンバレー」と呼ばれたりします。
HuaweiやTencent、BYDなどの中国のハイテク企業や有名な企業の本社も多数あります。
深セン体験記
香港から深センへ
私は深センには香港から鉄道で行きました。香港の地下鉄であるMTRの東鐡線(East Rail Line、下図の水色)に乗り羅湖駅まで行きました。羅湖駅で入境審査をすることで深センに入ることができます。
羅湖駅だけでなく、同じく東鐡線の落馬洲駅(深セン側では福田口岸駅と呼ぶ)から深センに行くこともできます。どちらから入境しても深センの地下鉄の駅があります。
帰りは落馬洲の方から香港に戻りました。
東鐡線はMTRですが地上を走ります。車窓からは香港の高い建物ばかりのイメージとは違った香港の田舎のような一面を見ることができました。
多くの人が香港と深センを移動しますが、そのほとんどが中国人、香港人でした。外国籍の人は少なかったので、外国人入境出境カードを書き、ほぼ並ばずに審査を終えることができました。
香港はとても狭く、窮屈な感覚がありましたが、深センの羅湖駅の方へ出ると、中国の広さを感じました。駅からしてとても大きく、広いです。
建物がでかい
会展中心駅付近に行くと、たくさんのレストランや、ショッピングモール、ホテルなど、高い建物に囲まれます。
日本でもあまり見かけないスケールの巨大な施設が多く、深センの発展具合を窺えます。
人が多く、多くの若者や家族連れがいました。
Tencent
Tencent(テンセント/騰訊)は、一時的に世界5位の株式時価総額にもなったことのある、中国ネットサービスの会社です。
中国人のスマホでのコミュニケーションの大半は無料通話サービスの「WeChat(ウィーチャット)」で行われます。日本でいうLineのようなものです。約10億人の利用者を抱えるWeChatを運営するのがTencentです。TencentはQRコード決済のWeChat PayをAlipayに少し遅れて始めましたが、WeChatの利用者の多さによって、WeChat Payも急速に普及していました。
また、Tencentはスマホゲームも多数リリースして、世界各国で大ヒットしています。Tencentのゲーム事業の収益は任天堂、ソニーを抜いて世界一となっています。
Tencentの発展の裏には、中国特有の個人情報の利用があります。中国政府によるAIの推進によって、中国では国民のプライバシーよりもAIの進歩が優先され、TencentなどのIT企業は様々なデータを集めることができます。そのデータを使って、AIの学習をすることができるのです。大量のデータで学習したAIを利用してTencentはこれからも驚異的な速度で成長していくでしょう。
深セン大学
深セン大学は深センで最も大きい大学です。深セン大学は現在も建設中で、これからも発展していくと思います。
また、深セン大学は財富創造力中国1位の大学のようです(参考)。将来的に大物も出てくるでしょう。
深セン大学では学生はほとんどが学生寮に住んでいると聞きました。学生寮は外から見ると、大きなビルのようでした。
キャンパス内にはバスが走っていて、移動に使うことができます。それだけ広いということですね。
学生寮の集まる場所の一部には民家や昔ながらの商店などがあったりしました。深セン大学の友人曰く、大学ができる前から住む人たちがまだ残っているそうです。
深セン大学の近くにはTencentがあり、Tencentの基金によって深セン大学はお金があると深セン大学の友人が言っていました。学生はTencentをはじめとする深センの企業にインターンをすることができることも深セン大学の魅力でしょう。
なんでもQRコード決済
中国ではQRコードを利用した電子決済や、サービスが普及しているのは知っていましたが、実際に利用している人を見ると、思っていた以上の利便性が感じられました。
地下鉄の券売機
中国人の友人が地下鉄のトークン(切符)を買ってくれるとき、地下鉄の券売機を使っていました。最後の支払いのとき、券売機の画面にQRコードが現れて、それをQRコード決済で処理して、運賃を払っていました。
改札
深センの地下鉄はトークンを使って乗ることができます。
また、地下鉄の改札にはQRコードの読み取り部分があるため、トークン(切符)を買わなくても、QRコードをスマホに表示させて、それを改札で読み取って地下鉄に乗ったりできるみたいでした。
改札までQRコード対応ということには驚きでした。
レストラン
もちろんレストランの決済もQRコードです。これは想像通りでした。
全ての店でこれが出来るわけではないですが、最も驚いたことは、レストランの机にあるQRコードを読み取るだけで、スマホ上で注文、会計ができるということです。スマホで注文することで、店員を呼ばずにご飯が運ばれてきて、会計も注文時に終わっているので食べ終わったらそのまま帰るだけです。
すごい便利で、人件費の節約にもなり合理的だと思いました。
QRコード決済
中国人の友人と一緒だった1日で、会計は全て電子決済だったため一回も現金を見ることがなかったです。深センのキャッシュレス化はすごい進んでいました。
QRコード決済はほとんどのお店でできるみたいで、Alipay(アリペイ/支付宝)かWeChat Pay(ウィーチャットペイ/微信支付)の2つがほとんどでした。
日本での電子決済方法といえばQRコードを使ったもの以外に、FeliCaを使ったものがあります。FeliCaはわざわざスマホを起動してアプリを立ち上げたりする手間がかからず、かざすだけで利用可能です。これはとても良い部分だと思いますが、QRコードの場合は、FeliCa対応でないスマホでも、画面とカメラがあれば決済が可能というのがメリットです。
比較的安いスマホでも、カメラはほぼ付いているので、どんなスマホでも使えるQRコード決済は中国で人気なのだと思いました。
中国が日本よりも電子決済が利用しやすいと思う理由は、中国ではAlipayかWeChat Payという2つが使えればほぼ全てのお店で会計ができる点です。日本ではとても多くの電子決済方法があるため、お店ごとに使えるものが異なるのが利用者としては困ります。また、日本では個人商店などはあまり電子決済を導入していないように感じます。
日本でも最近やっとQRコード決済のPayPayがキャンペーンで利用料金がかからないため、個人商店でもPayPayが使えるところが増えているように感じます。
欧米ではクレジットカードが日本よりも一般的なように、QRコード決済も世界中に広がり、各国間のQRコード決済の相互利用が可能になれば、もっと便利に海外でも買い物ができるようになると思いました。
中華IT企業の強さ
深センでの移動には地下鉄だけでなく、タクシーも使いました。中国人の友人がUberのような「滴滴出行」という配車アプリを使ってタクシーを呼んで、事前に目的地をアプリで指定しているのであとは乗るだけで目的地につきます。支払いもWeChat Payなので現金のやりとりもありませんでした。
日本でも最近タクシーをアプリで呼んだりはできますが、中国ではタクシーを呼ぶことによる追加料金がかからないのが魅力です。
深センでは出前サービスとして、UberEatsのようなものもありました。2社くらいあるみたいです。学生も多く利用しているそうで、深セン大学付近でもたくさんの配達員を見ることができました。
日本に留学していた中国人の友人は、この出前サービスがないため、日本では食事の調達がめんどくさかったと言っていました。しかし、その分日本のコンビニは便利で数も多いので、この出前サービスの代わりにコンビニをよく使っていたと言っていました。
まとめ
深センは中国の最先端都市で、想像以上の発展具合でした。
QRコード決済などの普及や、ITを駆使したサービスがたくさん使える深センは、中国のITについて知るには最適の場所でしょう。
これだけの発展を数十年で成し遂げる深センには驚きです。日本について危機感を感じるほどでした。
深センでは建設中のところも多くまだまだ発達途中のようなので、これからの深センの発展にも注目です。